top of page

リテンションに結びつく具体的な人事管理の例
(出典 山本寛研究室ホーム )

1.現実的職務予告

 採用に関する人事管理の一つで、入社希望者に対しその企業に採用された後、どのように働くかについて、明確に、詳細まで伝えることです。これによって、仮に入社前に企業や入社後の仕事について、非現実的に高い期待を持っていたとしてもそれを抑え、入社後の幻滅体験を抑制するとされています。

 そのため、ワクチン効果という場合もあります。この考え方によると、入社後多くの社員が仕事上体験するようなことについては、マイナスに受け取られがちなものでも包み隠さず開示することが必要です。それによって、実際体験した場合でも、事前にある程度予想されているため、企業への信頼感が損なわれることは少ないでしょう。

 

 実際、電話交換手募集の映像を、良いことばかり並べているものからより現実的なものに変えることで、退職率が低下したなどの成果が報告されています。

2.雇用の保障

 社員をリストラせず、組織での定年まで(または長期)の雇用を保障することで、長年、わが国の経営の特徴といわれました。経営トップが全社員に向けて宣言し、実際に守り続けることが重要です。

 

 これは、アメリカ、イギリス、中国、ノルウェーなど多くの国々の社員を対象とした調査でも、リテンションに有効であることが示されています。雇用保障によって、社員は不意に解雇される心配がなく、安心して生活ができます。

 また、企業の教育訓練を活用することで、能力の開発およびキャリアの発達が可能となります。これらの長所が社員に評価されて、定着につながると考えられます。

3.賃金の高さ

 賃金など企業が社員に支給する報酬の管理とリテンションとの関係が多く検討されてきました。その結果、賃金が高いことは社員の退職率の低さや勤続年数の長期化に寄与する、つまり、リテンション・マネジメントとして有効であることが実証されてきました。しかし、春闘などにより社員の賃金が一律にアップする時代は終わりを告げました。

 また、個人の成果を重視する成果主義が広がり、賃金を一律に高くすることで、多くの社員が満足するような高い賃金を支給することは困難になってきました。それらは、経済の動向や組合との交渉など、コントロール不可能な条件に左右されるからです。リテンション・マネジメントとしては、賃金の額という量的側面ではなく、賃金などをどのように配分するかという質的側面の方が重要になります。

 

 具体的には、勤続年数を重視するか、業績を重視するかなどですが、現在までのところ、どのやり方がリテンションに有効かという統一的な結果はみられていません。

4.福利厚生

 社員の福祉の向上を目的に、社員とその家族のために(賃金以外で)組織が提供するものを指します。

 

 福利厚生には、リテンションを促進する効果が指摘されてきました。例えば、企業独自の年金や持ち家補助などに典型的にみられるように、質の高い福利厚生は、転職した場合他の企業では得られないため、社員に退職を思いとどまらせる効果をもつと考えられるからです。

 

 実際、外国でも、職場のストレス、人間関係やプライベートな悩みなど仕事に影響を与える課題についてのカウンセリングを行う制度、セクハラ防止施策や退職者用のファンドの導入などがリテンションを高めていました。

​ 

 以上は、社員の雇用、報酬、福利厚生など様々な人事管理の領域に属しており、リテンション・マネジメントは、人事管理全体で総合的に検討する必要が示されたといえます。

© 2025 一般社団法人 日本リテンション・マネジメント普及協会 All rights reserved.

bottom of page